晩秋の法師温泉

群馬県利根郡みなかみ町の、法師温泉長寿館、昨年の11月15日に行ってきた。残念なことに、法師温既に紅葉は過ぎていた。四万温泉や、途中の猿ヶ京温泉と同じ10月中旬頃が良いのだろうか。新緑の頃の法師温泉が好きで、この時期に来ることはなかった。しかも、この日は宿泊の予約も早くから埋まり、一人旅の宿泊は出来なかった。コロナ対策も有ったのだろうか。話に聞く法師温泉の紅葉は、実に素晴らしく、一度はユックリと行くべきと言われてる。

法師温泉:温泉成分など
『温泉案内』(鐵道省:昭和6年刊)には現在と同じ、「浴槽は河床を利用した原始的なもので清冽玉の如き湯が、岩石の裂間から沸々と湧き出ている。(略)温度が余り高くないので長浴に適し、・・・」とある。今も昔と変わること無く、浴槽の足下から自然湧出している。湯温は42.7度湧出量155.5ℓ/分泉質はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉鉱泉分類は低張性弱アルカリ性高温泉溶存成分量1250mg/kg。加水も加熱もなく、常に新鮮な源泉が足下から湧き出てる。

紅葉の季節に温泉も良いが、ここ10年くらいは紅葉を楽しむ事もなかった。いよいよ後期高齢者に近づき、たそがれの美が解るようになったのかな。例年、四万温泉の紅葉が10月中旬頃からだから、ほぼ同じだろう。少し早いが予約をしておかないと、四万温泉も猿ヶ京温泉も満杯になるかもしれない。県民割が9月末まで延長され、10月からは宿泊支援が始まるかもしれない。

はじめて法師温泉を知ったのは、母の死後にみなかみ町を訪ねた帰りだった。

母は47歳でガンで亡くなった。亡くなる前に長期間太田市のガンセンターに入院していた。その時に同室になった人と仲良くなり、退院したら挨拶に行くと言ってた。もう末期で1ヶ月か2ヶ月と言われていた。

母の葬儀が済み、みなかみ温泉に有るというその家を訪ねた。会えたかどうか、不思議なことに全く記憶にない。もう50年も昔のことだ・・・。

その帰り道に迷い、遠くの森の中に明かりが見えた。それを頼りに曲がりくねった狭い道を進むと、今の長寿館よりも古くて映画の舞台とも思える旅館が現れた。残念ながら宿泊は出来ず、当時は立ち寄り湯などというものもなく、帰りの道を教えて貰い、帰ったと思う。

昭和6年発刊の『温泉案内』(鐵道省)を見ると、法師温泉長寿館1戸と載ってる。昭和の初めには、すでに長寿館1軒になっていたようだ。昔は街道沿いの宿場として、数軒の旅籠が営業していたようだ。水害で宿は流され、長寿館だけが再建して今に営業している。

法師温泉長寿館に行ったら、建物や温泉を愛でるのも良いが、周辺の自然を見て欲しい。自然の美しさに見とれると思うが、この美しさは何もしないで出来たものではない。宿の人達による周辺の深い山の下草刈りや木々の間伐など、大変な手間が掛かっている。

温泉という自然の恵みを安全にいつまでも享受できるのは、この法師温泉長寿館という宿を守り続けている人達の、目にすることのない大変な努力とご苦労のお陰である。

手入れの行き届いた木々の美しさは紅葉も良いが、個人的にはやはり新緑の頃が一番好きだな。温泉に浸り、新緑の宿周辺の散策は命の若返りを感じられる。

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