ここ1ヶ月くらいの間で、猫のキータンがお漏らしをするようになった。もしかしたら軽い認知症とも思える。時々タタミなどが濡れていて、懸命に舐めていたのは尿が垂れたのだろう。股の辺りが濡れてることも多くなった。

まだ14年、人間の年齢に換算すれば73歳だそうだ。特に異常も無く元気に過ごしてる。腎臓機能が少し弱ってるそうだが、それは年齢的に仕方が無い程度だそうだ。食欲は以前よりも増えたように思う。トイレに行く回数も増え、頻尿かもしれない。尿量も多く、以前と変わらない元気さはある。

もし病気だとすれば、考えられるのは認知症がわずかだが発症しはじめてるのかもしれない。あまり外に出なくなり、いつも周りにまといつき、少し見えないと家中を啼きながら探し始める。側に居れば体の一部を貼り付けて安心して寝る。数ヶ月の間に、よく食べてよく水を飲み、トイレに通う回数が増えてよく寝てる。その行動が極端になってきた。寝る姿勢はお腹を上にすることが多いのだが、数日前に少しずつ漏らしてるのが分かった。

お漏らしをしたからといって、怒る気もしない。例えお漏らしをしようが、寝たきりになろうが、いつまでも長生きをしてもらいたい。猫と共に暮らした7年間、居なくなれば本当の独居老人になってしまう。たった一人の話し相手が居なくなってしまう。

7年前に36年間共に暮らした妻を喪った。35年間、義母のパチンコ依存症のために幾度となく迷惑を受けてきた。時にはあの義母の顔を見たくないと、離婚届を2回も渡した。本人の責任では無いのに、長い間責め続けてしまった。やっと静かに話し合える環境になり、理解しようとしたときに、末期癌が見つかった。10ヶ月間、本当に話し合いたいことを何も言えずに、少しずつ死んでいくのを見ていた。個室を用意してもらい、昼も夜も狭い部屋の中で過ごしたが、ついに何も言えなかった。
いまだにあの時の薬品の臭いや、毎日拭いてたやせ細った体の、もう臭いさえも無くなってしまった様な体臭。下痢が続き、オムツ交換したときの臭い、トイレに散乱した下痢の処理の臭い、もう臭いも無くなってわずかに薬品のようだった。なのに不思議なことに、いまだにあの病室でのことが忘れられない。あのわずか10ヶ月間が、誰にも邪魔をされなかった、二人だけの夫婦生活の全てで在ったように思える。息途絶える時に、彼女は幸せな一生だったと思えただろうか。鬼畜の様な親元で虐待を受け、結婚後は夫に責められ、それでも親は棄てられずに癌という病に精神も肉体も、喩えようもない痛みに苦しめられて逝ってしまった。幸せなときはあったのだろうか。

何も出来なかったことの悔いや悲しみは消えることは無い。せめて、たかが猫1匹でも、息を引き取るときには良い人と暮らせて幸せだったと思ってもらいたい。
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