第1回温泉名人検定試験

日本温泉協会の創立90周年記念事業として、2019年12月8日に「第1回温泉名人検定試験」を行った。会場は目白の川村学園女子大学目白キャンパスで、当初のアナウンス(観光経済新聞Web版)では2019年10月15日締め切り、800名の受験者を見込むとあった。まだテキストも出来ていないということで、ノンビリしていて6月末頃に申込をしたら、翌日には日本温泉協会HPで申込締め切りとなっていた。数日後に返信メールが届き、キャンセル待ちになったが、まもなく申込のメールが来た。そして、受験の結果が2月1日に届いた。

観光だけを学んでいても難しいと聞いていたが、確かに内容的には温泉や観光だけではなかった。化学や水文学など、温泉に係わるあらゆるものが対象科目になってて、意外と面白いものだった。テキストを使い事前講習が行われたが、様々な講習会に参加していたので、それが非常に役立った。試験の難易度からみれば、難しくはなかった。全60問、90分、60%以上の正解率、36以上の正解で合格となる。事前にテキストを読み、当日の事前講習を受ければ大丈夫。

試験当日の1ヶ月も前から呼吸困難と咳が止まらなかった。原因は強い抗生剤入りの点鼻薬の使いすぎだったようだ。当日も咳と息苦しさが続いて、試験官の人もこちらを見ていた。ほぼ3~40分で終わって途中退出を考えていたら、検討の結果60分を過ぎたら退出をしてもOKと告げられた。本当に助かった。

第1回温泉名人検定試験:2019年12月8日

会場は目白駅を出て近くの、川村学園女子大学目白キャンパス。受験票と共に送られてきた地図でも分かる通り、ほとんど間違えずに行ける。

途中に「目白豊坂稲荷神社」と「市来嶋神社」が祀られてる。「目白豊坂稲荷神社」元は「此花咲耶姫稲荷」といい、学習院校内にあったそうだ。学習院と共に移転し、1908(明治41)年に学習院が目白に移転されたときに、現在の豊坂に遷座されて豊栄神社と呼ばれるようになったとか。「市来嶋神社」は習い事の神様との看板もあった。そして直ぐ先に見えるのが川村学園女子大学目白キャンパス。

事前講習

A会場とB会場に別れた。女子大ということもあり、男子用のトイレが無かったのが、チョット辛かった。きゅうきょ男子用に一つが解放されたが。講習内容は講師によってはパワポを使い、レジュメも用意されていた。

温泉医学:前田眞治先生

前田先生の温泉医学の講習は、ほぼ時間一杯使い、全ページの解説を受けられた。何度か先生の講習を受けられる機会があり、今回はその総まとめ的な内容で、一気に進まれたことで逆に頭の中でまとめられた。

温泉の温浴効果については多少の知識もあったが、本当の効果についてはいつも疑問に感じていた。特に草津温泉の時間湯については、皮膚の病気以外にも骨折や内臓にも効果が有ると聞いた。そういう事が信じられなかったのだが、免疫力増強効果・タンパク修復機能をきいて、大いに得心できた。

改めて温泉の効果はその成分内容や温度等により、効果の有ることを学べた。

温泉総論:平野富雄先生

今回、最も熱血講習をされた先生だと思う。今回のテキストをザッと読み、常に感じてた疑問点が何となく分かってきた。分かってきたということは疑問があるということで解決できたということでは無いが。

温泉の成分に関しても、入浴の効果に関しても、最も基本というべき「温泉法」には何の記載も無い。温泉を使用する場合の手続き法のようだ。最も疑問に感じていたのは、温泉の成分と含有量の、人体への影響はどの様に有るのか、それが分からない。鉱泉の定義の決められた経緯は分かっても、なぜその内容になったのか、分からない。

テキストの中でもっとも面白く読めたのが総論で、より詳しく知りたくて『温泉大鑑』(日本温泉協会編:昭和10年発刊)や「温泉法」「鉱泉分析指針」も読んだが、ますます分からなくなった。なので最も興味を持っていたのがこの総論だった。期待に違わず、引き込まれた講義だった。機会があればより詳しく学びたい。

温泉地学:大山正雄先生

地学に関しては、以前から温泉地域学会の濵田先生のお話しを伺ってから、温泉という意外にも地理学に対しての興味があった。今回は別の面からの講義でもあり、水文学という面も知り有意義に学べた。濵田先生の影響か、出来ることなら地理学を学びたいと思ってる。理系の地理地学ではなく、文系の人文地理学を学べたらと思っている。なので総論と共に興味を持って学べた。

温泉観光学:市原実先生

渡されたレジュメをテキストとして講義が行われた。

観光に関して、具体的な数値を挙げて、温泉地ランキング・都道府県別温泉地数・旅館ホテル数、温泉地の利用目的類型、三大古湯、三大名湯、有名温泉地の活性化やまちづくりなど、地理を念頭に置くとより興味深く学べた。

ただし、何故か、故意にでは無いと思うのだが、「温泉地とまちづくり⑤草津温泉⑥伊香保温泉」だけが抜かされた。最近、草津温泉の人気は上がっているが、以前の草津温泉を知ってるものから見れば、あまりにもテーマパーク的になって本来の温泉に関しての「源泉主義」が薄れてきたような、江戸後期から始まり明治期に確立された「時間湯」が廃止になってしまった問題などが、全く語られなかった。

草津温泉の右肩上がりの急成長は素晴らしいと思うが、本来の温泉の効果を最も発揮できる「時間湯」廃止について、観光の専門家の意見が聞きたかった。残念だ。

温泉法学:周作彩先生

事前にテキストを読み、コレは実際にテキストを読んだ人で無いと分からないと思うが、要は強引にでもやった者勝ちということなのか。温泉の採掘や湯口権など、法的には個人法が、民法等が優先されてしまうのか、何となく得心できないままに終わった。何となく温泉に関する法律が明確で無いように思えてしまう。金と力があれば何とでもなってしまうのか、得心がいかない、というかチョット理解できなかった。

試験終了後に何度も読んだが、やはり理解できない。頭の悪さに、自分自身が嫌に成る。

温泉化学:今橋正征先生

難しい授業だったが、今まで漠然としていたモノが整理できた。

塩化物泉・硫黄泉・硫酸塩泉・炭酸水素塩泉・二酸化炭素泉などは、総論の成分分析と共によく分かった。他にも、電気伝導度・pH・浸透圧・モール泉・化石海水なども分かりやすい説明だった。酸化還元電位(ORP)に関してはまだ良く理解できない。

検定を受けて

先ずは「日本温泉名人」に認定され、ホッとしてる。

今回受験のテキストと温泉ソムリエテキストを読み、温泉に関しての疑問が更に湧いてしまった。そして、行きたいと思っていた温泉宿が廃業したのを知り、温泉に光が当たりながら、それに反して隠れた名湯・温泉地が寂れていくのが、何とも悲しい。きらびやかな観光地としても素晴らしい温泉地、マスコミに取りあげられる名旅館やホテル、豪華な料理、それも良いが本来の温泉の素晴らしさが置き去りにされていくようで、寂しい気持ちになる。

知識を増やすことも良いが、その知識を活かして何かの役に立ちたいと思う。

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