万年筆を買う

人類が意思伝達のために言葉を持ち、それを遺すために文字が生まれた。後世に文化と思想を伝えるために、文字を用いるのに必要な「紙」(印刷)は、人類の三大発明といわれている。更に加えるならば、万年筆も実に素晴らしい発明だと思う。鉛筆やボールペンと違い、指の痛みも少なく手も疲れない。人類最大の発明だ・・・などと思っているのは・・・誰もいないかな。

ときどき無性に何かを書きたくなる。そんな時に必要な道具が万年筆かもしれない。

初めて本格的な万年筆を持ったのは、二十歳くらいだったような気がする。それまでは主にBか2Bの鉛筆を使っていた。ボールペンと違い、鉛筆の書き味は数段良かった。シャープペンは、当時はまだ芯の出来が悪く、直ぐに折れてしまい、使い勝手が悪かった。

プレゼントだったと記憶してるが、PARKERの太い胴軸がエボナイトに日本漆塗りで、大きな金色のペン先には細かい模様が刻まれていた。スポイト式でタップリとインキを入れると、インキの補充を忘れるくらいにいくらでも書き続けられた。いくらか太字、中字くらいだったかなあ、鉛筆で言うと2Bのような柔らかさで、鉛筆ほど力を入れなくても、思った事が勝手にスラスラと書けた。

小さなインキ瓶が空になる前に、漆模様が禿げてしまった。大事にしてた万年筆だが、仕舞い忘れたのか落としたのか、失ってしまった。あの書き味が忘れられず、エボナイト製のPARKER万年筆を買おうとしたが、漆の万年筆と同じ大きさと同じようなペン先の物が、あの当時で5万円を超えていた。当時の高卒の初任給が2万円程度だったと記憶してる。驚くほど高価で、あのプレゼントされた漆塗りの万年筆はそれ以上に高価だったのでは。仕方なく日本製の万年筆を買ったが、ペン先が小さかったせいか、堅くてあの書き味が無く、次第に書く事も無くなった。

弟が高校を卒業したら自分は家を出ようと決めていたが、弟は自力で大学に進み、家からの仕送りも無しに卒業し、見事に上場企業に就職をした。この事で完全に自営を継ぐ事が決まり、何となく今まで来てしまった。

筆記具を使わず、やがてワープロ機からパソコンに替わったが、この歳に成るとやはり万年筆が懐かしくなる。そして何かが書きたくなってくるものらしい。

とにかくペン先の大きな、そして胴軸の太い万年筆を買う事にした。とはいえ、収入の少ない身としては余り高価な物は買えない。インキもカートリッジとコンバーターの両方が使えるが、もちろんコンバーターにした。昔のスポイト式に比べるとインキの量が少なく、カートリッジよりも少ないかもしれない。

ペン先はM、中字という事だ。試し書きをしたら、このSAILORが最も気に入った。パソコンではキータンに邪魔をされてしまうが、万年筆で紙に書くには、キータンの背中も邪魔には成らない。

残り時間も少なくなってきた。これから何を書こうかな。毛筆で古典の書写も良いが、自分には思いのままに書くのが性に合ってるようだ。

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