川原湯温泉街の散歩:2008年

群馬のみならず、全国的にも奇岩の続く渓谷美と秋の見事な紅葉は有名だ。伊香保の奥座敷とも、草津の上がり湯とも言われてきた隠れた名湯「川原湯温泉」、そこは八ッ場ダムによって消えてしまう。2008年の初夏、温泉街と神社と狭い旧街道、そして狭い農地を歩いた。

川原湯温泉の歴史

川原湯温泉街の食堂「旬」で戴いた『やんば散策マップ:平成18年度版』によると、温泉発見には二つの説が有るようだ。

補足
最も新しい川原湯温泉については、川原湯温泉協会で確認して下さい。

吾妻川源頼朝が建久4年(1193年)、浅間狩りの時に山の中腹から湯煙が上がるのを見て見付けたという説。もう一つが、800年程むかし、上湯原の不動院に宿を借りた旅の僧が、夢に薬師如来が顕れて、温泉を教えたという。その僧の名前が川原朝臣権頭光林(かわらのあそんごんのかみこうりん)で、その名前から村人はこの湯を「川原湯」と呼ぶようになったという。

川原湯温泉というと、吾妻側の渓谷に張り付くような、狭い道に何軒かの温泉宿があるくらいに思っていた。ただその渓谷の美しさは、「上毛カルタ」にも「耶馬溪しのぐ吾妻峡」と親しまれてきたように、特に紅葉の季節や新緑の頃は、切り立った奇岩や巨木に挟まれて、吾妻の流れや流れ込む支流の滝などの美しさだけが強調されてきたように思われる。ところが、この地は信州から江戸への交通路として、山間の街道ではあっても歩きやすく、随分栄えたようだ。

 

東京都の人口増加に伴い、水不足を懸念して八ッ場ダムの計画が持ち上がって、既に約40年が経った。当初の計画は文化財保護法の指定区域「名勝吾妻峡」の中心付近だったが、昭和48年に約600m上流に変更され、吾妻峡の4分の3が残る事になった。現在の川原湯温泉は完全に水没する事になるが、高台の周辺代替地に移転し、温泉も源泉を保護し使用するの変わらないとの事だ。しかし、多くの歴史的文化遺産や、自然研究の為の岩脈などはそのまま没する事になる。

川原湯温泉街の散歩道

川原湯温泉2008年川原湯温泉街の散歩は、JR川原湯駅前から山道に入り10分も歩けば、直ぐに温泉街になる。山肌に張り付くような、狭い道の両側に並んだ温泉宿と、食堂やわずかな住宅が有るだけだ。横道や裏道などはほとんど無い。そのまま歩くと直ぐに温泉街を抜けて、人も車も通らない鬱蒼とした山道になり、やがてまた本道に出る。どうも肥りすぎたのか、この山道は翌日になるとキツイのが良く分かる。道路自体は八ッ場ダムとの関係なのか、何処もみな舗装はされていた。両脇から覆い被さるような木々と、道の間を通り過ぎる風は爽やかに涼しくて、登りや下りの多いにも関わらず、ついつい早歩きになってしまった。ただ悲しいのは、何処に行っても工事中の現場が多い事だ。こういうのは、どうも旅情を壊してしまう。

 

川原湯温泉2008年神社

歩く事にばかり想いが行き、というよりも、山道がきつかったせいもあり、この道沿いには多くの道祖神や石仏が並んでいたのに、ジックリと見る事がなかった。戦国時代、この地の奪い合いが越後の上杉・甲斐の武田・相模の北条との間で行われた。日本武尊の東征以来の、歴史的にも多くの面白い話しの残る所のようだ。それに伴ってか、この吾妻川両岸には多くの寺や神社が、物語の言い伝えの石や山が、人々の目を逃れるようにひっそりと佇んでいる。吾妻渓谷がそのまま残されても、これら水没予定地に有る遺跡類は移転できないだろう。

今回改めて小冊子を読んで、温泉以外にも実に多くの歴史的興味のある遺跡群が、川原湯温泉を中心に点在してる事を知った。それらが湖底に沈む前に、散策路に点在してるそれらを見ておきたいものだ。食堂で貰った『やんば散策マップ:平成18年度版』だが、宿泊すれば何処の宿でもあるのではないかと思う。吾妻渓谷の歴史を記憶に残す為に、これを手にして歩きたいものだ。川原湯温泉街とその周辺は、知れば知るほど興味の湧く事ばかりだ。足に自身さえあれば、これほど面白い所も無いだろう。

川原湯温泉の立ち寄り湯

川原湯温泉には11軒の旅館民宿がある。ほとんどの旅館で立ち寄り湯も出来るようだ。渓谷を望む、見事な眺めの露天風呂も有るので、頼んでみるのもいい。

川原湯温泉王湯2008年

温泉街の道に沿って「聖天様の露天風呂」「笹湯」「王湯」がある。「王湯」は雑誌等でも紹介され、川原湯温泉というと必ずここの写真が載っているので有名だ。旅館街のほぼ真ん中辺りにあり、入って直ぐ左にある受付で300円を払って入る。右に渡り廊下を通り下に降りると露天風呂になっている。渡り廊下手前を右に降りると、内湯になっている。どちらも特に貴重品入れなど無く、むかしの銭湯のような脱衣場が有るだけ。貴重品は受け付けに預けるようにすると良いらしい。露天は広くはなく、脱衣場も死角になっていて貴重品が置けなかった。穴場は内湯で、ここは余り人が入らないのでノンビリ出来て良い。建物の中とはいえ、湯気が籠るので窓はいつも開かれていて、露天と同じ様なものだ。3本のパイプから源泉が四六時中流したままになっている。直ぐ横が源泉なので、かなり熱く、絶えず少し水道水が入れてる。入る時には充分に気を付けなければ、その熱さに驚くだけではなく、チョット危険かもしれない。

川原湯温泉聖天様の湯

「聖天様の露天風呂」は、温泉街に入って直ぐの山手側に「山水」という旅館があり、その中の吾八寿司横から登っていく。完全な露天で、簡単な屋根と脱衣場が有るだけの作りになっている。100円を柱に括り付けられた箱に入れ、脱衣場に荷物を置いて入る。ここも熱いので、水道が用意されている。この露天風呂から更に狭い道を上ると、「歓喜天」を祀った聖天様がある。歓喜天は子孫繁栄と精力増強の神様で、その形のお供え物があるそうだ。余りにも雑草が生い茂っていたので、残念ながら行く事が出来なかった。

聖天様の露天風呂
聖天様の露天風呂は2013年に閉鎖になったようです。『スッチーの混浴露天風呂体験記』川原湯温泉「聖天様露天風呂に画像もあり、詳しく書かれています。非常に大切な記録です。

「笹湯」は全く目立つ事もなく、もしかしたら看板も無かったのか、見つからなかった。温泉街吾妻川側の、高山旅館の横を下に降りると有るそうだ。他にも、温泉街を通り過ぎて本街道に入る為の橋を渡る手前に、ここの住民の為の共同浴場がある。ここは住民の為の施設なので、観光客は入る事は出来ないそうだ。

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