さよなら、ジロ君 

さよなら、ジロ君 (03.1.15)

2003年1月にジロが死んだ。白い身体に耳の先の白いこの猫は、不思議なことに何を言おうとしているのかが、互いに分かった。猫の言葉でもなく、人間の言葉も使わず、何となく感覚的に分かった。同じような経験を中学時代に、真っ黒な猫との間でもあった。気持ちの通じ合うペットとの別れは辛い。

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 ジロが初めて家に来たのは、確か2年位前の夏の頃だったと思う。
 まだ小さい白い猫で、耳だけが黒く、シロに点が二つでジロと名付けた。古いタイプの新幹線のような顔をして、初めからなんとも人なつっこい性格であった。あまり可愛いと言うような顔ではないが、愛嬌のある顔をしていた。数ヶ月も経つと、シッポと背中がグレーになり、特にシッポは太くて、背中からシッポにかけての毛並みが綺麗に成り、顔も男らしくなっていった。

 家には13歳になる、メスのミー子がいるが、この子は自分が猫のなのに猫嫌いで、近寄ってくるジロの頭をいつも叩いていた。それでもそっと寄って行っては、ミー子のお尻の臭いを嗅いでは、「クッセー」というような顔で舌を出して、ハァ〜ハァ〜と息をしていた。
 ジロはミー子が常に気に成っていたようで、「ミー」とミー子を呼ぶと、自分の名前を呼ばれた時よりも早く駆け寄ってきて、あたりをキョロキョロとして、ミー子の来るのを待っていた。

 昼間のジロ君は一人遊びが好きだった。
 庭木や雑草の中に入っては、虫やトカゲを捕まえて、一人でいつまでも遊んでいた。近所の猫が来ると家の中に逃げ込んでしまい、臆病な所もあった。

 ジロ君の好物は肉であったようで、初めて家に来た時にはなかなか魚を食べなかった。ミー子は肉が嫌いで、魚しか食べない。いつしかミー子に習って、ジロも食べるようには成ったが、赤身のマグロを少しくらいで、大好物と言うほどでもなかった。食に関しては決まった物しか食べずに、変わった物や、好物で食べ過ぎた時、生ものを多く食べた時には、ほとんどのお腹の中の物を吐き出してしまう。近所のお宅に遊びに行く事も有ったそうで、やはり食べ物を出しても食べなかったそうです。その家には小鳥も飼っていますが、たぶん興味も示さなかったのでしょう。好きなだけ寝て、起きると一応挨拶だけして、帰ってしまうそうです。

 身体が弱くて、すぐに風邪を引いてしまう子でした。来た時から、何となくカスレタ声で鳴いていましたが、半年くらい前に風邪を引き、それからは良く声も出てなかった。いつもの事だからと医者には連れて行かなかったのが悔やまれます。

 仕事が遅くまで続くと、椅子の側によってきて鳴きます。無視すると足に身体をぶつける様に擦り寄ってきます。家に入れて食べ物を用意して、また工場に入ると、食べずに出てきてまた身体を寄せてきます。

 面白い子で、一緒に上がって家に居るのを確認するまで食べ始めませんでした。
こんなジロ君が皆好きで、いつも家族と一緒に寝ていました。顔だけ出して、人間と同じように寝ているその寝顔は、人間のオヤジ顔の時もあり、子供の顔でも有りました。

 今年の1月の2日、午後から珍しく雪が降りました。

 その午後からジロがいなくなりました。雪で帰れなくなったのかと、随分と探しました。ポスターも作って、近所の方にも探してもらいましたが見つかりません。オスなので、成長して自分探しの旅に出たのだろうと、懸命に自分自身を納得させようとしました。

 1週間以上が過ぎて、近所の方から死んでいるとの連絡が有ったそうで、納品から帰ると工場の中に連れ戻されていました。いつも「もう仕事止めて上がろうよ」と言っていた、椅子の近くに2日間置いておきました。斎場に連れて行くにも可哀想で、家の庭木の、ジロがいつも一人遊びしていた所に埋めました。

 今までに何匹もの猫を飼いました。随分と可愛い顔の猫もいました。仕種の可愛い子もいました。

 ジロは猫というよりも、人の感情のわかるような子でした。
 一緒にお風呂に入って遊んだ事。外でよその猫が来た時に慌てて駆け込んできた時の顔。しつこいお姉ちゃんの腕に飛びついて噛んだこと。皆がジロの事を忘れない。

 いつかまた会えるといいね。

 さよなら、ジロ君。