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はじめに
大川溶接所
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SUSチーズ継手製造法

溶接法

1、溶接は難しくない

一般的な溶接に比べて、ステンレス鋼をTIG溶接することは難しくないです。まして、チーズに関しては形状が既に決まっているので、サイズが違っても形状は同じなので、一つが出来れば全てがその応用にすぎません。

チーズ溶接に関して、難しいと言う事には二つの意味が有ります。
1つは、難しいと言うことで単価の設定価格を最初から高く出来ます。確かにこの製造法が出来た経緯は、液圧バルジ工法が特許の問題も有って製造価格が高く、利益率が低かったようです。溶接工法は製造単価を下げるために考えられました。当初高い価格であった物が、製造価格が低くなれば、当然高利益になります。溶接法が難しく、量産が出来ないと成れば、価格の維持が容易だと思われたのでしょう。この製造は個人の町工場で作られたので、適正価格が決め難くなってしまったのかもしれません。

2つ目には溶接工にも原因があります。根本原因は工場経営者かもしれませんが、これが始まった当初の溶接値段から、考えられないほど簡単に、常に値下げに成ってきました。わずかでも販売価格が下がれば、その分は全て先ず溶接価格の下げから始まりました。そのために新たな溶接工も育たなかったし、新人に対しても教えなかった。経営者と共に製造法を考えれば、より良品を能率的に製造でき、この工法が最も得意とする、多品種を少量生産で現在も安定して生産が出来ていたはずです。

問題は現在の状況です。利益率が良かったために、また大手企業が手作業による熟練工でないと出来ないと判断したために、一部の特定の工場で優先的に製造する事になりました。そのために、利益優先になり、溶接前行程の改良を考えずに、賃下げや工場の閉鎖等に至ってしまいました。現在は溶接価格が低くなり、溶接工が離れてしまいました。最大の問題は溶接単価以外に、前工程の状態です。全く溶接行程を無視してきたために、非能率的になってしまったのです。例えば、A社の1×10sは1日に300個以上、残業して500〜800個の溶接が出来ました。C社で前工程をした物は、同じ時間残業しても400個も出来ません。しかも価格は現在は6割にまで下がっています。当社自身、現在は状況を見て転職を考えていますが、これは当然の事です。前工程の改良と製造管理で、まだまだこの製法は活路が有ると思います。この製造法が消えてしまうのは、全て大手製造メーカーが直接製造に関して関わって来なかったのが原因です。数十年にも亘って、各種のステンレス鋼継手を見てきたので、特にチーズの板工法に関しては、深く関わってきただけに残念です。

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2、トーチの動かし方

良品を安定して溶接するには、何度も述べたように前工程が大事になります。溶接に適した前工程が出来ていれば、トーチは固定して、誰にでも簡単に溶接が出来るように成ります。このサイトを作ったのは、過去に製造された型を少しだけ改良すれば、トーチ固定の溶接が出来、この製造法も再び生きてくるのではないかと考えたからです。当面、それが無理という前提で、各種の型での問題を回避するための溶接法を述べてみます。トーチ固定の溶接法は、このサイトが出来てから、裏当の作り方と共に改めて書き加える予定です。トーチ固定では、以下のaからdまでの技術は必要ないです。

a)上下に動かす
ギャップが無く、ほとんど付いている時に行います。板厚が4.0以上の場合に良く行う方法です。電流が高いと溶融地が広くなり流れるので、上下に動かして局部的に確実に溶かします。下げて母材とトリタンの間は1mmくらいで熱を集中させ、少し上に上げて溶融地周辺を安定させます。多少の経験が無いと、文章だけでは理解出来ないと思います。要領としては熱を集中させて溶かし、溶加棒を入れて盛り上げる、パルス機能を使った溶接機と同じ紋様が出来ます。

b)前後に動かす
これも上下に動かすのと同じ意味です。大径物で板厚の大きい物に適します。溶接の母材先(溶接進行方向前)を少し上がるようにして、トーチの熱を先に与えながら、前後と上下の運動を加える様に動かします。強く広く溶かして、溶けた母材を下に流れるようにして、不足した分を溶加棒で補うようにします。この手法は慣れないと非常に難しいです。溶けて母材に被さるようになってしまいます。また裏波が綺麗に出ず、溶融不良に間違われます。

c)左右に動かす
これはウイービングという溶接方法です。ギャップが開き過ぎている時に行います。慣れ無いと不良を出し易い、難しい方法です。溶接の下請けとしては、この方法を使わなければ成らない品物が最も嫌です。現在の3×2×10sは8mm以上も開いているので、単価の6割近くが溶接棒の代金になります。一日の工賃が、棒代だけを引いただけでも3500円程度です。この外に電気代や運送費なども考えれば、こんな仕事など消えてしまうのも当然です。単価的の大きな問題ですが、それ以上に溶融不良が出やすく、その修正も難しく、ガス等の巻き込みも起こりやすくなります。

d)回すように動かす
これは左右に動かすのよりも難しい方法です。間違うと最も不良品が出来てしまう方法ですが、板厚が厚くギャップが大きくて開いている場合には、この方法でないと出来ません。電流は場合によっては低めにして、じっくりとゆっくりとトーチを動かします。当然トーチは溶接先に向けるようにしますが、傾け過ぎると裏波が綺麗に出ず部分的に溶融不良になります。よほど熟練した人で無いと無理だと思います。この状態に更にズレが加わると、現物でないと説明できないくらい難しい問題が多く出てきます。TRの場合、特に大径物の場合、前工程の改良が出来てないと、この溶接法が出来ないと作れなくなります。逆に、この溶接法が出来ればほとんどの前工程が原因の不良品でも溶接が出来るようになります。

e)トーチを固定する
板厚の30%から50%のギャップの時には、できるだけトーチは上下左右前後に動かさない方が良い状態で溶接が出来ます。板とトーチのトリタン先は1mmくらいと近づけると、最も安定した綺麗な溶接になり、溶接の盛りも少なくバフが早く楽になり、裏波が安定して溶融不良が無くなり、理想的な溶接と成ります。これは前工程が良くなければ出来ない方法です。かつての西沢継手の型(現在、西澤鉄工所所有)では、ほとんどこの溶接法で出来ました。型の製造段階で、最初からトーチ固定の溶接法用に作った物です。トーチ固定では溶接時間はかかるが、作業者に負担がかからないので、安定して長時間の溶接が出来ます。

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3、ゴミ・ガス等不純物の巻き込みに注意する

これは大きな問題と考えるか、どうせ安い品物(溶接品は二流品)だから仕方ないと考えるのか、考え方によって違うかもしれない。少なくとも、自分はこの製法の当初から係ってきてという自負によって、問題の起き無いように努力している積りです。しかしこの問題も、その原因の全ては前工程の問題に起因している。ある意味では溶接行程で努力注意しても、回避できない事が多い。

油分・ゴミ等が付着して、溶接が難しい時に、トリクレン洗浄を前工程で行うように頼んだ事があったが、ふき取るだけで良いと言われてしまった。例えば、エアーくらいで吹き飛び洗浄されると思っている様だが、その言動で発注元のステンレス鋼に対しての姿勢が分かる。溶接前にトリクレンかアセトンで洗浄し、ゴミや油脂分を取り除く必要がある。

a)ゴミの巻き込み
単なるホコリ程度なら吹けば飛ぶが、油分が付いていれば、そのゴミは取り難くなる。またゴミ自体の問題も有る。燃えてしまうような物なら、溶接中に何とかできるが、鉄粉や工場内に浮遊する酸化皮膜が油脂分に付いた等の場合には…これは全て前工程と製造管理者の責任です。ひどい場合には鉄粉・ホコリ・タバコの吸殻のようなゴミまで、油雑じりで付いている事も有ったが、作業者全員の再教育が必要なくらいだ。まして潤滑剤の油までもが付いていれば、トリクレンかアセトンを使わなければ取る事は出来ない。燃えるようなゴミの場合には、電流を弱くして、じっくりと回して時間を掛けて溶接をするのが良いようです。溶接行程としてトリクレン洗浄を望むのは、前工程での潤滑剤としてのラップなどの付着を取る必要があるからです。溶接途中の加熱によって、溶けて油分となり邪魔をします。また、この蒸気はトリタンを汚して、寿命を早めます。

ゴミとは違う問題ですが、抜き型が無くプラズマ切断をした場合、切断面を砥石グラインダーで削ります。この時に、削られた部分の表面が荒れていて、溶接時に酸化物が発生し、裏波部分に出てきます。浅ければ削り取ることも出来ますが、深い場合は裏から溶かして修正をしなければ成りません。この修正は非常に難しく、確実に溶かさないと内部不純物を取り除けないまま、表面だけの修正になってしまいます。更に、削った後に酸化した糸状のバリが出て、それを溶接すると裏側に酸化金属の深い穴が空きます。この修正は単純なゴミではないので、溶けて表面に浮いて消えるような物ではありません。この事も文章の説明だけでは難しいものです。

b)油分
普通はトリクレンやアセトンで洗浄します。溶接行程を請け負う者としては、この洗浄は是非行ってもらいたい。溶接の裏波の出方や母材とのナジミが全く違う。また薄く油分が付いているだけではなく、溶接部に明らかに分かるように付いていると、裏波が不安定になり、場合によっては裏波の横に水滴が散ったような模様なったりする。油分については潤滑剤であることが一般的なので、ゆっくりと燃やすように溶接をする。

c)ガスの巻き込み
ガスの巻き込みはトーチが母材から離れ過ぎている場合に起き易い。アルゴンガスだけではなく、空気の巻き込みも同じように起きてしまうので、トーチの間隔には注意が必要になる。特に回すように溶接するときに注意が必要になる。ガス流量とトーチ間隔で調整しなければならない。

d)水分
水分の付着は絶対に起こしてはいけない。特に溶接部についている場合には、蒸気になってガスの巻き込みと同じようになり、裏が蒸気によって溶接不良を起こしてしまう。溶接中に裏波側に水滴状の溶融不良や、細かい割れが起きてしまう事が多い。寒い時期に溶接で手間取ると、当金が結露してしまうので、充分に気を付けなければならない。

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4、ギャップの広狭の違い

溶接部のギャップは、板厚の3分の1から半分程度が最も良い。板厚3mm以下ならピッタリ付いていても良いが、それ以上なら少し開いていた方が良い。問題なのは開き過ぎの場合で、板厚以上に開いてしまうと前に書いたようにウイービングなどをしなければならず、難しくなってしまう。また開き過ぎの場合、当金が早く傷んでしまうので、絶えず修正をしなければ成らない。修正をすると、その度に溶接の条件が変わってしまうことが多いので、小径物の場合には注意が必要になる。A社とB社の時には当金の修整はした事が無かったが、C社の溶接をするようになってからほぼ500個で溶接で肉盛りをして修整している。当金の修正や作り替えは時間と勘が必要になります。製品になじむまでの時間も掛かります。溶接行程としては、最もやっかいなのがこの当金の管理です。

製造の前工程によって、片側が付いてしまい片側が開きすぎてしまう事も有る。この場合は熟練が必要になる。当金が合わなくなるからで、前工程の問題です。この問題は単にギャップの広狭だけではなく、溶接部分のバックリングにも係わることなので、より溶接を難しくしてしまいます。

最も悪いのは枝管が付いていて、母管側が開き過ぎの場合だ。これも前工程の問題で、溶接では解決できない。原因はプレスの力不足と母管部分の心金が細いからだと思う。

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