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SUSチーズ継手製造法

前工程の問題

前工程での問題点は前項でも述べたように、ズレとギャップと曲部のR径です。そして根本的な問題はプレスの力です。問題点を一々挙げるよりも、実際に起きた不良品で考えてみます。

問題の発生した製品は、SUS316の4×1*1/2×10です。
母管側に外側15mm内側20mm、内側から外に割れが発生した。目視では判らなかったが、水圧検査では滲み出た。調査報告書では、原因は溶接部が薄くなり、内側の溶融不良でキッカキが出来て、その部分から割れが生じたという事に成っています。

1、プレスの力不足

第一の原因はプレスの力が不足していた事です。SUS316材での不良でしたが、同時に作ったSUS304を溶接したのは私です。私が溶接した物は不良には成りませんでした。この時のプレスは200屯でしたが、4inでは最大加圧時に直ぐに上げてはダメです。最大加圧後数秒間押し続けなくては、母管側のバックリングが大きくなり、溶接部のギャップが8mmまで開いてしまいます。開き過ぎで内部溶融が完全でなかったので、裏波側に溶融不良が起きました。それがクラックとなり、割れ発生の初期の原因に成ったと思われます。しかし、溶融不良で一部にクラックが生じて薄くなっても(2.5mm)、簡単に割れが発生するでしょうか。

母管側から見て「枯れ葉マーク形状」に成ってるので、整形で丸にすると裏波のクラックを開くようになります。最大の原因は前工程のプレスの力不足、形状不良です。1型・3型は、特に1型に関しては一型に対して200屯以上は必要だと思います。因みに、圧着されたように成っていたのは、母管部外周長が大きくなっていて規定の寸法まで圧縮されたので、結果的に圧着状態に成り目視では分からなかったと思います。

2、バフ行程での注意不足

「枯れ葉マーク形状」であるにもかかわらず、均一な丸に仕上げようとした為に、溶接部を削り過ぎて板厚が薄く成ってしまいました。この場合も、根本原因はプレスの力不足だと思う。完全に押してあれば、このような形には成っていないはず。しかしバフ行程において、見れば分かる事なので削り過ぎには充分に注意するべきでした。

バフの方法には布バフをまとめたものとベルト式があるが、いずれにしろ母管の形状には注意が必要です。平らに削っては薄くなります。

3、溶接の経験不足

溶接に適しているのは、板厚の1/2以下が適切です。8mmも開き、しかもズレまで出ている場合は、それなりに多くの経験が必要です。本来溶接を考えた前工程なら、このような問題は起きなかったはずです。大径は多少の経験が必要ですが、経験的に見て難しいというものでは有りません。溶接での問題回避の方法は、別項に書きました。

この溶接を行ったのは工場近くの溶接工で、それなりにTIG溶接では充分な経験が有ったようです。しかも社内下請けという形で、私の2倍の溶接単価で溶接棒とガスは無償支給でした。それでも一般溶接単価よりも低かったので、早く溶接を済ませるために確実に溶かせなかったようです。この人の場合、経験不足というよりも単価の低さが原因だったのかもしれません。もっとも専門職である私は更にその半分の単価でしたし、今は更に下げられています。前工程が適切に出来ていないと、よほど手抜き溶接をするか、この溶接を止めざるを得ないでしょう。溶接工を雇っても、果たして効果はあるのだろうか。単価計算をすれば簡単に出ることだが。

4、熱処理での固溶化処理が出来ていなかった

各部分の素材や硬度検査の結果も出ていたが、硬度の変化とF(フェライト)の発生の分布を見ると、固溶化処理が完全では無いのは判ると思う。またこの時の溶接棒は316Lだと思う。後に不良原因の報告書を見たときに、素材よりも溶接棒の素材のカーボン量が低かったように思う。ローカーボンの規定と同じ0.02の含有量だったと思う。(このサイトを読まれた方で報告書をお持ちならば、是非今後の為にコピーさせて下さい)この数字を見て、直ぐに感じたのが異材と熱処理が原因ではないかと思いました。316Lは熱処理が充分でなくても、所定の強度は維持できます。熱処理が出来ない場合に、この316Lを使用して溶接をする事が有ります。母材は316ですから、溶接時に受けた熱影響は固溶化処理をしなければなりません。手元に報告書が無いので、不確かな記憶ですが、割れは溶接部に沿って母材側に起きていたと思います。熱処理が完全なら、例え溶融不良で部分的にクラック状に薄くなっていても、簡単に割れて液漏れが起きるはずがありません。多少溶融不良部分を開かれても、割れが発生するとは考えられません。溶接で硬化して、クラックを開くように成形型で押されたので、割れが発生したと思う。

5、何故判らなかったのか

一度完全に割れた後に、成形型で強く押されて圧着状態に成り(外周長が長く、圧着状態になった)溶融不良が分かり難くなったのではと思う。何度も書くが、プレスの力が不足していたので、形状が崩れていて、計算上の外周が大きくなり、それを強引に真円にする事で肉が寄せられ、特に熱処理不足で強度が一定でなかった為に一度割れを起こした溶接部分が圧着状態に成ったのではと思われる。そのため目視検査で見逃されたと思う。

6、最終報告では溶接が原因

報告書では全ての原因が溶接という事になっているが、報告書の中の素材の分析や各種の検査結果を良く読めば、決して溶接だけが原因ではない事がわかる。しかし、結果的には溶接での溶融不良が有ったのだから、結論として溶接の問題なのかもしれない。この不良品の発生に関しては、各種の行程での問題点が絡んでいるので、更に画像等を用いて詳細に考える必要が有ると思う。

材料取り・プレスの力・溶接法・バフ・熱処理等々、各行程での注意が必要だと思う。ただ、自論ながら溶接に適した前工程なら、決して不良は発生しない。

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