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大川溶接所
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SUSチーズ継手製造法

溶接前行程

板製法によるチーズ継手製造で、最も重要です。この製造法の普及が出来なかった最大の原因が、全てこの前工程に有ると言っても過言では有りません。溶接技術の方にばかり眼が向き、また溶接技術で前工程の問題点も克服できるので、注目されなかったのかもしれません。この行程が完全なら、溶接に関しての問題などほとんど無いと言えます。前工程が適切に管理され、運用されながら改良されていたなら、多品種大量生産が出来ていたと思います。

これを治すかどうかは型の所有者、経営者の判断に依るが、どうも経費から消極的に成ってしまうようです。製造に関しての所要時間とコストを考えれば、長期的には経費削減と相対的な能率化が出来たのは明らかな事です。型が決まれば、プレス加工は熟練でなくても、誰でも出来ます。最も注視された溶接も、誰にでも出来るようになり、特に熟練工でなければ成らないという事が無くなります。型の管理は極めて重要なので、責任あるメーカーが、知識と技能を有した人の元に管理するべきであったと思います。

前工程での問題点は多いのですが、単に文章だけでは表現が難しく、またデジカメでの画像も多数集めましたが解り難いので、時間を掛けて問題点一つ一つを述べて行きたいと思います。具体的には次稿で、出来るだけ具体的に詳細に述べます。話せば簡単なのですが、文章での説明は難しいです。前工程が確実に出来ていれば、TS等はトーチを固定して半自動のように安定して高品質で量産も出来ます。私自身の経験でも、トーチ固定等も用いての溶接で、A社で2in以下月産13000個を溶接していました。B社では4in以下全てのサイズで、月産8〜9000個を溶接していました。

1、プレスの圧力

当然の事ですが、プレスの容量が不足していては充分な形状には成りません。素材が硬いとか板厚が違うとか言っても、プレスの力が有れば塑性変形後落ち着かせる事が出来ます。素材の変形による変質や磁性に関しても、後の熱処理で解決できるので、全く問題は有りません。要は溶接に最も敵した状態にする事が大事です。経験的に、4inから1inまでが1型に対して150屯、1in以下が80屯くらいではないかと思います。実際にはA社が180屯、B社が200屯・180屯・100屯プレスを使っていました。

型には分割型と連結型が有ります。分割型とは各行程毎に、1型・2型・3型・成形型というように別に成っている物です。連結型とはベースに各行程型が付けられていて、ワンストロークで例えば三型を同時に行うものです。連結型の場合、プレスのベットは広くないと出来ません。連結型の場合にはかなりのプレス容量が必要に成ります。更に連結型の場合には、三型に対して同じ圧縮力が必要と云う訳ではなく、各型形状に対しての力の入り方の違いと、必要とするストロークの違いによるタイムラグが生じ、修整等で生じたクリアランスも影響して、それによってズレが起きてしまいます。型の管理者はそれらの事を充分に考慮し、常に製品の状態をチェックする必要があります。分割型以上に、型の維持管理については難しいものが有ります。管理がいい加減でも溶接は出来ます。だからと全ての問題を溶接で解決させる事は、製造業として如何なものかと思います。より高品質で安定的に製造を心掛けられなければ、経営者としての資質と製品供給の永続性に疑問を感じます。

例えばプレスの力が不足してる場合、同じロットの製品でもバックリングの出方が違い、溶接前に枝管の先を加えて開きを揃えるのに時間がかかります。そればかりか、無理に枝管の径を揃える為に形状自体も変わってしまい、裏当てと合わなくなります。初めてこの溶接を経験した時には、A社B社共に1in以下は全くギャップを揃える必要が無く、枝管を押さえるなどの作業も無く、直ぐに溶接にかかれました。作業に対するストレスが無く、安定した溶接が速く出来ました。

また、バックリングの大きな物を無理に押さえて溶接した場合、母管の径が大きく成ってしまいます。その場合、整形時に母管側面に型のキズが出る事も有ります。更にはバフ時の削り方によって、溶接部が薄くなります。更に、内部の裏波が一定でない場合、特に溶融不良が有れば傷が広げられる事になり、割れが生じます。更に最終整形時に、大きな母管外周長が圧縮されるので、的確な熱処理固溶化処理が成されていても、再び塑性硬化を起こし磁性を持ってしまいます。これらの事は、何回か実測して確認すれば防げる問題です。

プレスの力不足は、材質との関係で形状の違いを起こす事もあります。例えば、SUS304・SUS304LとSUS316・SUS316Lではバックリングの出方に違いが有ります。モリブデン系のSUS316・SUS316Lは多少力が弱くても1型の通りの形状に成りますが、SUS304・SUS304Lでは開いてしまいます。また、ローカーボンのL材も型の通りに成り易いようです。ギャップの開き方が違い、当然ながら当金も違ってきます。解決策は形状に合ったプレスの圧力だけです。経験から、1in以下の場合には1型に対して100屯くらい。2*1/2in以下には150屯、それ以上4in以下まで200屯くらいは必要に成ります。母管から枝管までの曲部のR径が小さい場合には当然更に力が必要に成ります。力不足を感じても、最高圧力のまま数秒ほど保持する事で、かなりバックリングを消す事も出来ます。全工程の管理が出来ていないと、早く作業を進めようと急がせますが、大事な事はどこかを把握しなければなりません。

因みに、プレスで1型から3型まで一人で作業して1inで1日に8〜1000個出来ます。A社で私が実際に作業して時間を計り、3回の型交換も含めた実働7時間で1inを1200個を作りました。溶接は1日同時間で340個、バフは半日で500個、切削は1個10〜15秒です。A社工場長が溶接と酸洗を除けば、2in以下だけなら3人で充分に15000個は可能だと言っていたのも、このような計算が出来たからです。プレスに余裕が有り、工場長が型工場で修行した職人だから出来た事です。B社の場合でも熱処理・切削・溶接・検査を除けば、4人で4in以下8〜9000個を製造していました。適切な型とプレス、能力のある管理者がいれば充分に可能です。

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2、抜き型が適切でない

これは型の製作者と注文主との間で充分に話し合う必要が有ります。溶接法で述べますが、溶接に適したギャップは板厚の1/3〜1/2が適切です。板が3mm以下の場合には、ギャップが無くても溶接は出来ます。6mm以上の場合には板厚の1/2以下では充分な溶融が難しく、溶接時間は少し長く成ります。溶接の手法にもよると思いますが、板厚に合った、溶接工の技術に合った適切なギャップが出来る様にしなければなりません。逆に、常に安定した理想的なギャップに成っていれば、それに合わせた溶接、速度・電流・溶加棒径が決まり、初心者でも問題無く直ぐに安定した溶接が出来ます。

抜き型の兼用について、型の経費節減のように思えますが、溶接からみればとんでもない間違いです。10sと20sを兼用した場合、20sでギャップが0でも10sでは2〜3mmも空いてしまいます。溶接速度としては単価の低い10sの方が遅くなり、なおかつ溶接棒も多く使用してしまいます。逆に10sで適切にすると、20sでは座屈を生じる危険もあります。20sと40sの兼用でも、同じような問題が起きることは当然です。型の兼用をする場合、問題の起きないように開き過ぎにしてしまいます。熟練した溶接工なら簡単でも、初心者では極めて難しい溶接になってしまいます。

例えば1*1/2×1*1/4×10sでみてみますと、A社(現西澤鉄工所有)の型の場合トーチ固定で1日に1in以下で400個は可能ですが、現在ギャップが3mmも開いていてやっと250個です。2×3/4×10sでみると、以前の型は300個が可能でしたが、母管側が5mm近くも開いて、ズレも4mm有り、更に曲部が小さい半径に成っているので、これでは200個も難しく熟練工でないと出来ません。3×2×10に至っては、ギャップが8mmも有り、一日に残業しても100個も出来ません。適切なギャップなら200個以上は出来ていました。

金額的には、いかに残業しても2万円にも届きませんし、他の製品に比べても多くの溶接材を使いガスの使用量も多くなります。下請けは嫌がるでしょうし、社内の溶接工では納期の問題も出てくると思います。これは単価の設定自体が問題ですが、製造工程でのコスト削減が出来るのに、努力を怠る事もまた大きな問題ではないでしょうか。

B社の抜き型では、2inのTRは一体型ではないので、母管側の径の寸法を自由に変えられるので、10s・20s・40sを兼用しても問題は有りませんでした。いかにも原始的と思っていましたが、適切に管理が出来ていれば、この方法も良いかもしれません。

大径物で板厚が厚い物は、また数量が少ない時など、プラズマ切断する事が有ります。量が少ない場合はそれも仕方ない事ですが、溶断部が酸化してるので研磨が必要に成ります。研磨を簡単にするために荒目のリューターで削る事があります。充分に注意しないと、これは最悪の溶接になります。ステンレスの細かいバリが出来てしまい、それが原因で裏波部分に酸化物が多数発生してしまいます。結果、裏側から表面を溶かし酸化物を浮かせて、削り取る事になります。深い事もあり、表面のみを溶かしても内部に酸化物や気泡状を作る事になります。プラズマ溶断は絶対に良くないです。型を作らないので経済的な様でも、最終的に多くの問題が発生してしまいます。

プレスの力が無いのか、抜き型が合っていないのか、これは重要な問題です。

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3、1型の形状とズレの問題

次にズレに関してですが、後々の全てのズレの多くは、ほとんどが1型の時に受けたズレによるものです。このズレに対しては最も注意が必要です。素材に対して接地してから圧縮完了までのストロークは短いのですが、この間の型を設置したプレスの動きのズレが重要です。ズレにも2種が有ります。高さの違いが出るズレは、ギャップが広いと溶接は難しくなります。また、板の寸法が足りないと後の加工が出来なく成ります。ギャップが違ってしまうズレは、片側が狭く片側が広くなってしまいます。狭くなる方が内部に挫屈してしまう場合があります。こうなると当金に合わなくなり、溶接はほとんどダメです。裏側から修整溶接をして削らなければなりません。溶接工にここまでやらせては問題です。下請けではなおさらヤル気無しに成ります。更には両方が同時に起きる事も有ります。こうなるとかなりの経験が必要ですが、下請け泣かせなのは当然です。それ以上にバフが難しくなります。

4、2型で生じるズレ

2型のズレは正しい押し位置に対して、平行にずれている場合と斜めにずれている場合があります。平行にずれている場合は、枝管の左右の高さが食い違ってしまいます。斜めにずれると、その食い違いは溶接に対しては極めて作業が難しくなります。これが生じる原因は、プレスにガタツキが有り上の押し型がグラつく事と、下型に材料を置くのに、一定でない事です。

例えば、1型で力が無く2型でずれると、特に母管の直管が長い物、2in以上の3段落ち以上などは溶接が難しく、かなりの熟練工でないと出来無くなります。とは言っても、プレスの力があれば充分に対応が出来ます。最悪なのが常にプレスの力不足です。裏当てに合わなくなり、如何に熟練工でも難しくなります。

5、3型の芯金

前項でも述べましたが、この行程の芯金が適切でないと、溶接は難しくなります。溶接が難しいと共に、裏波が綺麗に出ません。この見分け方は簡単なので、作業者が気をつければ簡単に回避できます。芯金が細ければ母管側の裏に押した跡が出ませんし、適切ならば押した跡は見れば分かります。1つが決まれば板の厚みはほとんど同じなので、そのまま作業は続けられます。ギャップが広がり、溶接後も母管側の径が大きくなるので気を付けなければ成りません。状態としては、プレスの力不足と同じようになります。

ズレの問題に関して、特に3連型の場合はプレスの力が無いと個々の品物によって少しずつ違ってしまいます。ズレに関しての問題は仕方ない事ですが、トーチ固定にしても全て同じズレならば意外と問題も解消されてしまいます。当初から3連については反対でしたが、それはプレスの力が不足してしまうのと、ズレが不安定に成るからです。

6、曲から直部の形状

形状について最も問題に成るのは、直管から曲部にかけてナダラカに移行しなければなりません。境目が極端に成っていると、わずかなズレでも溶接は難しく成ります。許す限り曲部の半径を大きくしてナダラカにすれば、サイズによってはトーチ固定が可能に成ります。トーチを固定できなくても、溶接は非常に簡単になり、かつ裏波は安定して精度の良い溶接が可能に成ります。溶接部が開き過ぎでなければ、です。

反対に曲部を小さくすると、整形の型には良いのかもしれませんが、極めて溶接は困難に成ります。更にズレが加わり、型を修整するなどの型に対する変化が加われば、熟練した溶接工でないと難しくなります。更にこの場合には、曲部のR径が小さいと材料が伸びて板厚が薄くなり、バフ段階で板厚がマイナスに成ります。

この板からの製造法のキーポイントは全て溶接ですから、最も溶接が簡単に出来る様にしなければなりません。トーチ固定の、簡単な溶接法が出来るかどうかはこの部分にかかっています。最初に関わったA社の型(西沢継手:現西澤鉄工所所有)は、この部分の問題を完全に解決してあるので、トーチ固定で13000個の溶接が可能に成ったわけです。問題が有っても、解決には全ての型を根本的に作り変える必要が有るので、難しいです。ただし、これが解決できれば、溶接は極めて安定して来ます。形状に問題が有り、ギャップが広ければ溶接は困難に成り、時間と溶接材・ガスがかかります。

曲から直にかけてナダラカニする事も大事ですが、曲部を小さくするかどうかも問題です。曲が大きければ溶接は楽に成ります。逆に小さければ、整形前の形状は仕上げに近い形なので見た目には綺麗ですが、溶接は難しくなります。更に1型で起きる板厚の問題も有ります。曲を大きくすると、周囲からの材料の周り込みが起きるので、板厚は薄くなりません。曲を小さくすると、枝管と直管の直部からの材料の周り込みが無く、曲部は材料が伸びるので薄くなります。西澤継手の型はこの点も解決してあります。故にトーチ固定で、しかもトリタンと材料の間が1?oしか開いてないので、溶接の幅を狭く出来るので、後工程のバフも早くなります。板厚がマイナスに成る心配もありません。総体的にコストを下げる事も可能に成りました。

7、型の磨耗と修整

型は当然磨耗してしまいます。その修整は単純に削る場合と、溶接で磨耗部分を盛ってから削る場合があります。どちらでも、削り過ぎが無ければ同じように思います。問題は左右の形状が違ってしまう事と、ギャップを挟んでの左右が違ってしまう事です。少しの違いならば溶接で充分に対応できます。しかし、この型の管理に関しては、やはり充分な経験者が必要に成ると思います。修整後は当然ながら今までの裏当金が違ってきます。その事を配慮して修整が出来る人が必要に成ります。ちなみに、最初に関わった時の工場長は型専門でしたので、かなり頻繁に修整をしていたのに、溶接での問題は全く起きませんでした。一度型が決まれば、この型の管理だけが問題で、各行程でのプレス・溶接・バフそれぞれに関しては熟練工でなくても出来ます。

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